太陽熱温水器の７つのデメリット！後悔しないために知っておくべき欠点と対策

「太陽熱温水器」は、太陽のエネルギーを使ってお湯を沸かす、環境にもお財布にもやさしい便利な設備です。しかし、導入を検討している人の多くは、「本当にデメリットはないの？」「失敗しないか心配」という不安を抱えています。

結論からお伝えすると、太陽熱温水器には、いくつかの大きなデメリットがあります。それは、天気に大きく左右されることと、建物の見た目が大きく変わってしまうことです。

たとえば、夏場の晴れた日には、ガスや電気を使わずに、すぐにお風呂に入れるほどの熱いお湯が作れます。しかし、曇りや雨の日には、水はほとんど温まりません。また、屋根の上に大きなタンクを置くことになるため、家の外観が変わってしまう点もよく指摘されます。

この記事では、太陽熱温水器の具体的なデメリット７つを徹底的に解説します。デメリットを事前にしっかりと理解し、他の給湯器との併用（へいよう）など、後悔しないための具体的な対策を知っておきましょう。

太陽熱温水器の最大のデメリットは「天候に左右される」こと

太陽熱温水器は、太陽の熱という無料のエネルギーを利用するのが最大のメリットですが、そのために天候によって性能が大きく変わってしまうという根本的なデメリットがあります。

曇りや雨の日はお湯が温まりにくい

太陽熱温水器は、太陽光を集めて熱に変えることでお湯を温めます。しかし、空が曇っている日や雨が降っている日には、十分な太陽光が集まりません。

• 曇りの日: 晴れの日と比べて、温まる温度が大幅に下がります。お風呂に使うには少しぬるいお湯にしかならないことがあります。
• 雨の日: ほとんど熱が得られないため、水道水と同じくらいの温度にしかなりません。

このため、太陽熱温水器だけでお湯の全てをまかなうのは難しく、ガス給湯器や電気給湯器との併用が一般的です。天気の悪い日には、補助の給湯器に頼ることになります。

冬場や気温が低い時期の能力低下と凍結のリスク

夏場であればすぐに熱いお湯が作れますが、冬場は太陽光が弱くなり、外の気温自体も低いため、お湯を作る能力が大きく低下します。

寒い地域では、温水器内部の配管などに水が残っていると、夜間や早朝に凍結してしまうリスクもあります。

• 対策が必要なリスク: 凍結防止のために、温水器の水を抜く作業（水抜き）をしたり、凍結防止のヒーターを設置したりする手間が発生します。水抜きを忘れて凍結・破裂させてしまうと、高額な修理費用がかかる可能性もあります。

お湯切れすると補助の給湯器が必要になる

太陽熱温水器がお湯を作れる量には上限があります。一般的な機種では200リットル程度のお湯を貯めることができますが、家族が多くてお湯を使いすぎた場合や、数日天気が悪い日が続いた場合、お湯切れを起こします。

お湯切れを起こすと、次に太陽の熱が集まるまで待つか、あるいは既存のガス給湯器やエコキュートなどの補助給湯器で温め直す必要があります。このとき、温め直すためのガス代や電気代が発生するため、せっかくの省エネ効果が一時的になくなってしまいます。

【見た目と設置】太陽熱温水器の設置に関するデメリット

太陽熱温水器は、屋外、特に屋根の上という目立つ場所に設置するため、建物の見た目や安全性に関するデメリットもあります。

屋根の上の見た目が悪くなる可能性がある

太陽熱温水器は、水を貯める大きなタンクと、熱を集めるための集熱板でできています。これを屋根の最も日当たりの良い場所に設置するため、家の外観に大きな影響を与えます。

• 景観の変化: 昔ながらの大きなタンクが屋根の上に乗っているように見え、家のデザインや外観を損なってしまうと感じる人もいます。
• 設置場所の制約: お湯を貯湯タンクに運ぶ構造上、タンクは屋根の上か、それよりも高い位置に設置する必要があり、隠して設置することが難しい設備です。

新築やリフォームで外観デザインにこだわりたい人にとっては、大きな欠点となる場合があります。

屋根の強度や形状によっては設置ができない

太陽熱温水器は、本体にお湯が入ると数百キログラムというかなりの重さになります。そのため、すべての住宅の屋根に設置できるわけではありません。

• 屋根の強度が不足: 特に古い住宅の場合、屋根の強度が温水器の重さに耐えられないと判断され、設置を断られることがあります。
• 屋根の形状: 太陽光を効率よく集めるため、南向きの屋根が必要で、勾配（傾き）が急すぎたり、複雑な形状をしていたりすると、設置が難しいことがあります。

設置前に、専門の業者に必ず屋根の強度と形状をチェックしてもらう必要があります。

集合住宅や隣家との日当たりに関するトラブル

太陽熱温水器は日当たりの良い場所に置くため、設置によって隣の家の窓や庭に影を落としてしまう可能性があります。特に、太陽高度が低い冬場や、隣家との距離が近い住宅密集地では、日照権に関するトラブルに発展する可能性も否定できません。

また、集合住宅（アパートやマンション）では、建物の所有者や管理組合の許可が必要で、個人の判断で設置することは原則としてできません。トラブルを避けるために、設置前に近隣への配慮と事前説明が求められます。

太陽熱温水器の「耐久性」と「メンテナンス」に関するデメリット

太陽熱温水器は屋外に設置するため、風雨や直射日光にさらされ続けます。そのため、メンテナンスの手間や故障・劣化に関するデメリットも考慮しなければなりません。

定期的な水の入れ替えや掃除の手間がかかる

太陽熱温水器を長く安全に使うためには、定期的なお手入れが必要です。

• 水の入れ替え: 温水器内の水は、水道水に含まれる不純物などで汚れていきます。機種によっては、衛生面を保つために定期的に水を入れ替えたり、内部を洗浄したりする手間がかかります。
• 集熱板の掃除: 屋根の上に設置されているため、砂やほこり、鳥のフンなどで集熱板が汚れると、熱を集める効率が落ちてしまいます。高い場所での作業になるため、危険を伴うか、専門の業者に依頼する必要があります。

自分で掃除や手入れができない人にとっては、維持管理のコストがデメリットになります。

本体や屋根が劣化する可能性と、台風時の心配

重い温水器を屋根の上に固定するため、温水器を設置した部分の屋根材や、温水器を支える金具が経年劣化（古くなること）によって傷む可能性があります。

また、台風や強風の際、温水器本体が受ける風の抵抗が大きいため、しっかり固定されていないと落下や破損のリスクがあります。

メーカーや業者の保証内容と、台風・地震保険で補償される範囲を事前に確認することがとても大切です。

故障時の修理費用が高額になる場合がある

太陽熱温水器の修理や交換は、高所作業になることが多く、足場代などが必要になるため、費用が高額になりやすい傾向があります。

特に、集熱板の破損やタンクの水漏れなど、部品自体の交換が必要な場合は、10万円を超える修理費用がかかることも珍しくありません。また、メーカーが古い機種の部品の生産を終了していると、修理ができず、本体を丸ごと交換せざるを得ない場合もあります。

既存の給湯器と太陽熱温水器を比較したときのデメリット

太陽熱温水器は、エコキュートやガス給湯器といった他の給湯設備とは、根本的な仕組みが異なります。そのため、使い勝手やコスト面でいくつかのデメリットがあります。

お湯の「水圧」が弱くなることがある

多くの太陽熱温水器は、水道水の圧力をそのまま利用せず、貯湯タンクの「落差」を利用して給湯する仕組みになっています。この仕組みだと、水道直圧式のガス給湯器などと比べて、水圧が弱くなります。

• シャワーの勢い: シャワーの勢いが弱くなり、使い心地が悪くなることがあります。
• 同時使用の制限: 台所とシャワーなど、複数の場所で同時にお湯を使うと、水圧がさらに低下し、実用性が損なわれることがあります。

水圧を重視したい人は、水道直圧式の太陽熱利用システムを選ぶなど、機種の選び方に注意が必要です。

初期費用が高く、費用回収に時間がかかる

太陽熱温水器を設置するための初期費用は、ガス給湯器や電気温水器と比べて高くなる傾向があります。

• 初期費用の内訳: 本体価格に加え、屋根への設置工事費、配管工事費、足場代などがかかります。
• 費用回収期間: ガス代や電気代の節約効果はありますが、高額な初期費用を節約分で回収するまでに5年〜10年程度の時間がかかるのが一般的です。

設置してすぐに引っ越す予定があるなど、短期間しか使わない場合は、初期費用を回収できず、損をしてしまうことになります。

デメリットを理解して太陽熱温水器導入で失敗しないための対策

太陽熱温水器のデメリットは多いですが、それらを補うための対策を知っておけば、導入で後悔することを避けられます。

既存の給湯器と上手に「併用」する

太陽熱温水器の欠点である「天候に左右される」点を補うには、既存の給湯器との併用が最も効果的な対策です。

• お湯を事前に温める: 太陽熱温水器で温まったお湯を、ガス給湯器やエコキュートの「給水」として利用することで、補助の給湯器が温める手間を減らし、ガス代・電気代を大きくカットできます。
• 使い分け: 晴れの日は太陽熱だけでまかない、曇りや雨の日は迷わず補助給湯器を使うなど、メリハリをつけて利用しましょう。

このように上手に併用することで、太陽熱温水器の経済的なメリットを最大化できます。

導入前に知っておくべき補助金制度

太陽熱温水器は環境にやさしい設備であるため、国や地方自治体によっては、導入のための補助金や助成金制度が用意されていることがあります。

• 費用の削減: 補助金を利用できれば、高額になりがちな初期費用を大幅に抑えることができます。
• 確認のポイント: 補助金には募集期間や申請の条件が定められています。導入を決める前に、お住まいの地域で利用できる制度がないか、必ずチェックしましょう。

補助金を利用することで、費用回収にかかる時間を短くし、コストのデメリットを軽減できます。

まとめ

太陽熱温水器は、ガス代や電気代を大きく削減できる魅力的な設備ですが、いくつかの大きなデメリットがあることを忘れてはいけません。

• 最大のデメリットは、曇りや雨の日、冬場にはお湯が作れないなど、天候に性能が左右されることです。
• また、屋根の上の見た目が変わること、設置できる家に制限があること、水圧が弱くなることなども、事前に確認すべき欠点です。

これらのデメリットを解決するには、既存の給湯器と上手に併用し、天気の悪い日には補助の給湯器を使うなど、柔軟な使い方がとても重要です。導入前に、設置場所の確認、初期費用の回収期間、補助金制度の有無をしっかりチェックし、ご自宅の環境に合うかを慎重に判断しましょう。